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それに…。破壊者掃討は捗らない。しかも獲物は横取りされるしね、最悪…。
[外した指輪を丁寧に一つずつ解き、輪の無い物へと変化させる。]
「――随分虫の居所が悪いらしい」
[微かに空気が揺れる。男の感情がほんの少しだけ垣間見られた瞬間。しかし女にはどうでもいい事。]
悪いわよ。最悪よ。わたしはこの指令に巻き込まれて、何もかも全て狂わされたわ。
わたしは正直、破壊者の事なんてどうでも良かったの。兄様の気を惹きたい為だけにこの場所に身を置くわたしにとって、指令の成功だけが愛の証。
破壊者達は、自分達を抹消しに集められたわたし達が邪魔。だから放っておいても何れは殺意を向けるだろうからって高を括って置けばいいと思っていた。
けど――
[そこまで言うと、女は手を動かす事すら躊躇われるように、頬を紅潮させて。拗ねた唇は熱い溜息を漏らす。まるで艶やかに花開いた大輪の月季の如く。]
出逢ってしまったの。わたしの全てを揺るがしてしまうような存在に。貴方より愛しいと思う存在に。
…出逢ってしまったの。
ねぇ?可笑しいと思う?兄様。
貴方を恋い慕い、貴方の移し身の存在にまでと請っていたわたしが…。仮初に現まで抜かしてしまうなんて。可笑しいと思うでしょう?
[鈴の音と共に自嘲が零れ落ちる。指は、再び金属の欠けた輪を繋ぎ合わせる。]
でもね、兄様。わたしは一夜にして、あの人から人を愛するという事を…教わったわ。それはそれは熱っぽい指導の許に。
だから…
[カチリ][カチリ]
[金属が組み合わさっていく音が、部屋に響く。]
ごめんなさい、兄様。わたし、もう貴方を惑溺する程愛せない…。貴方の為に任務も遂行できない。
もう、貴方の喜ぶ顔を見たいが為だけに動く、天使にはなれないの…。
[カチリ――]
[最後に組合わさった音と共に、女は静かに立ち上がる。
手には細長い金属の筒状の物が握られていた。]
今のわたしはもう、貴方の望む姿に戻れない。戻るつもりも無い…。命にも従うつもりも無い…。
わたしはただ、自由になるために戦うわ…。生も死も愛も恋も憎しみも悲しみも、全てから自由になるために。
そんな姿は…
果たしてあなたから見たら…破壊者に見えるのかしらね?
[艶麗な笑みと姿を変えた部下を携えて。女は長居をした部屋を後にしようとする。
と、その時。静かに佇む男が動き出す。]
「――餞別だ。受け取れ」
[物体が、放物線を画きながら女の許へと舞い落ちる。
迷わず手にしたそれを見つめて。女は男に何を思ったのだろうか。]
貴方からの最後の愛、しっかり受け取ったわ。
お元気で。わたしの愛しい兄様――
[ヒールの高音だけが鳴り響く中、重厚な扉はいつしか静かけさを*身に纏っていた*]
[――死ぬ間際の記憶《衝撃》が蘇る]
「あはっ…オードリーなら、あたしをあたしとして好いてくれるよ…」
[ポケットに入っている一枚のメモ。ソレが彼女の心の全て]
「シリアルみたいに、ミルクはかけないね」
[じゃっ。
近づいてくる天使にもう一丁のシューターを向ける。
それは無数の毒針を飛ばすニードルガン…
引き金を引けば、美しい天使をハリネズミ…否、美しいまま人形に出来る]
[そう、少女は思っていた]
「…」
[トリガーに力が入らない]
「… … …」
[それどころか。声を出すことすらも。
指一本動かすことも。
視線を動かすことも…寧ろ。意識を保つことすらも]
『あれ、れ?
おかしいな…ローズの攻撃…全部、避けた、ハズ…』
[がしゃっ…
両手の玩具の様な銃が赤い床へと落ちる。
少しして、少女はゆっくりと膝を突いて…
意識は漆黒の闇へと堕ちた]
――回想・2F"Blue"floor――
〔腕にした男の身体が、此方へ伝える激しい竦み。女の鼓動は一瞬跳ねて…その瞬間にあることを悟る。…だから、影の手に抱擁を巧みに外されるとき…尚もと抗ったりはしなかった。痛む左肩に、負担はかからない。〕
……、…ン
〔そのとき此方は、先程目の前の彼が自らの言葉に驚いていたらしいのと同じく…自らの行動にやや目を瞠っていた。常は饒舌な唇を、一度開いて…何か言いたそうにしてから閉じ〕
…そうか。そうだった、な…。
〔闇の瞳を見詰めながら、半ば呆然とする。もう一度頷いて、彼に呼ばれた自らの名を反芻する。〕
本当だ。私は…また幾重にも誤解している。
〔女は影が離れる間際、ぽつぽつと呟く。拙かったが。
彼以外の皆に自分の所在とメッセージを手紙として渡していたことと、ニーナがローズを引きつけてくれていると信じていたこと。
それから…目の前の彼が"奴ら"に許されない時期にきていたキャロルと一度は戦うだろうが、…手分けしてニーナと此方の加勢に来てくれると思い込んでいたこと。
だから、ニーナが死んだ…と女が断言してしまったのも、キャロルが姿を見せない今…彼の口から何か訊かない限り、自分の思い込みである可能性があるということ。
此方が知っている、というのは誤りで…感じただけ、ということ。〕
…確かめなくては。私は。
君に私を諦めさせてしまうところだったんだ。
…ジーン…有難う。行ってみる。
〔そして、離れ行く男の背に…もう一言声を。〕
…次は強請るよ。……こわいけれど、きっと。
〔…間に合っただろうか。彼の背は…此方を拒んでいないように見えたから、受取ってくれたと思いたい…女は初めて…*不安にかられたのかもしれない*。〕
――回想・2F"Blue"floor・終了――
ぁー…うー…
[軽く頭を振り。
ゆっくりと目を覚ませば、其処は…]
どこ?ここ…
んー。ローズが誘ったにしては…殺風景だね?
――???――
[zap...zap...zap...
男の目の前にあるのは、無数の「数」、或いは「コード」。]
…………………
こ……こ……は………
[zap...zap...zap...
無数のそれは規則的な流れをもって、螺旋を描きながら、上方或いは下方へと流れている。]
………儂……の……大……砲………
[zap...zap...zap...
探すが、見つからず。
目の前にあるのは、無数の「数字」、そして「コード」。]
大……砲………?
[男の「意識」を司る「それ」――それもまた、数字とコードの羅列であるが――が、ふと「自分」から発せられた「言葉」に、「疑問」を投げ掛ける。
己を形成する「システム」のひとつひとつが、緩やかに解体され――]
……………!!
否。儂は、"Sledge-Hammer"………!!
[完全に解体される寸前の所で、男の「意識」は再構成を開始した――]
[――システム、復元。]
――B2F staff room――
[専用ルームを後にした女は、エレベーターに乗り込むと迷わず最下階行きのボタンを押し、冷たい壁に身を預ける。
そして再びドアが開くと、足は血塗られた部屋ではなくスタッフの控え室へと進む。]
[死臭の漂う躰を清めるように熱いシャワーを浴び、女はB.B.R.(この場所)へ着てから何度目かの着替えを行う。
選ぶ色はいつもとは正反対の――黒色。
纏いし香りは、いつそれの禁止を意味する香りか、それとも別な意味を持ち合わせる誘い香か。]
[そして全ての身支度を整えると、指で朱を引き…。
部屋を後にする。]
鬼さんこちら、手の鳴る方に――
[ひらり――]
[ひらり――]
[死を誘う黒き天使のように]
[ひらり――]
[ひらり――]
[軽やかに*舞いながら*]
――B2F "Red"floor――
〔訪れた"Red"で、女はニーナの遺体と対面する。既にスタッフの手で清められた彼女は、唇へ弾けた疵を残していた。眉を顰める。〕
――ニーナ。
〔悔いも嘆きも、総ては瞳の奥に潜む。〕
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すみません、まだ寝てなかったりorz
推敲しろって感じですね。文章変です。
そして独り言で落とすべきかと思った内容。
支離滅裂に拍車が掛かりますorz
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