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――エレベーター内――
[Bluefloorの喧騒から逃げるように立ち去った女は、その足で無機質で無重力な箱に駆け込み、壁に寄りかかり一つ溜息を吐く。
純潔を思わせる真白ワンピースは、今は血の匂いを漂わせ。身に纏う者を狂気の沙汰へと引き摺り込もうと手招きをしている。]
「――恋をした訳ではあるまい?」
[動くモーター音に、ふいに何時かの言葉を思い出してしまい。女は冷たい感触に抱かれながら苦笑を漏らす。]
――いいえ、恋などして居ないわ?ただ、あの人を純粋に愛しただけよ?
殺めてしまいたい位、純に…――
[留まる事を知らない機械は、彼女の呟きを飲み込みながら、暗渠へと沈んでいく。
静けさを保ったまま。規則正しい*音だけを立てて*]
――3F "Blue"floor ラウンジ――
〔吹き抜けの空間から昇り来るサウンドは、却って間近で聴く其れよりも奥深く身体全体に響く気がした。ゆっくりと身体から酒が抜けるのを待つうちに、見下ろすフロアの蒼へ漠然と思うところを探す。去り際の影の言葉を幾度も想い…〕
…ン。……そうだな。
皆を愛してると言いながらも、
せっかくこれだけ非情になったんだ…
せめて交す中で個々に潰されることがないように、
ある程度固まっておかなくてはね。…
〔彼我の内訳を独断で明かした意図は、共闘による確実な任務遂行に他ならない。捨てられない感傷との矛盾に、女はささやかな愉しみを見出すことにしていた。少しばかり身体を解した後…やがて微かなヘリオトロープとブラックペパーの香りを纏い階下へと女は降り行く。〕
――3F"Blue"floorラウンジ→1F"Platform"モニター前――
――B2F STAFF ROOM――
[血塗られた天使は、そのこびり付いた朱を流し落とす為にスタッフルームへと訪れる。
用件を短く述べて借り出したシャワールームの中、しばしの間生温い雨にその身を委ねて、穢れを全てリセットしていく。]
[そして濡れた浴室を後にし、血生臭さを綺麗に落とした身に纏う色は、再び純潔を思わせる白――
タイトに纏わり付く、薄手の素材でコサージュを重ねたワンピースにひらめく羽の尾は、動く度優雅に宙を舞い。
それは天使の羽ばたきに似て美しさを醸し出す。]
生きるは苦しみ、愛するも苦しみ――
同じ苦しみを味わわなければいけないとしたら…。
さぁ、貴女はどっちを選ぶの?
[緩く巻いた髪、鎖骨を滑り落ち――
鏡に向かってルージュを引く女は、写し身の姿に問いを掛ける。]
でもそれは愚問よ?貴女。
わたしの答えなんて…もう既に決まっているのだから…。
[自らに投げかけた問い。しかしそれはすぐに陳腐に成り下がる。己のやり取りに、女は何処か他人事のように、くすり くすり 笑みを零して――]
さぁ、元の世界へ戻りましょうか…?
このままではわたし、きっと詰まらない女に成り下がっちゃう…。
[身支度を整えた女は、再び地上へと足を運ぶ。
持ち合わせた答えを、豊かな胸元に隠し持ったまま。]
――B2F STAFF ROOM→1F Platform――
――1F Platform――
[地上に舞い降りし天使は、一人主の欠けたカウンターバーへと足を運ぶ。]
ラバーズ・ドリームを頂戴?
[ひらりとスツールへ身を乗せると、女は愛らしい名前のカクテルを注文し、辺りを見渡す。
まるで恋人達の夢を改竄するために訪れた、夢魔のような微笑を浮かべて。]
――B1F・"Black"Floor――
[男は何も語らず、ただカウンターで腕を組み、目を閉じて居る。]
[耳に届くのは、猟奇的な破壊神が轟かせる爆音と、彼らを崇拝する「蛆虫」達の声。]
[しばしの沈黙の後――男は目を開ける。]
………行くかの。
[男は、ゆっくりとした動作でフロアを後にした。]
――B1F・"Black"Floor → 1F・"Platform"――
――2F "Blue"floor――
簡単だよ、ジーン。
あたしが求めてるのは…適度な刺激。
お仕事だって。
わざわざあたし達でやらせなくても。
上でやれば一番手っ取り早かったんだから…
[くす、と笑うとスツールから立ち上がった]
つまり。
あたし達が好きにやって良い、って事なんでしょ?
あたし達の遊びなんだから…ね。ふふっ。
[ゆっくりとした足取り。
しかし、人混みに触れることなくエレベーターへとたどり着いていた]
――2F "Blue"floor → 1F Platform――
――1F Platform――
[…エレベーターから降りると、カウンターへと向かう。
皆が目を惹くその姿を見つけると、微笑みを携え隣へと座る]
アップサイド・ダウン、お願い。
[カクテル、だが、少女のその姿には似つかない。
バーテンが少しだけ目を向けるが、すぐにシェイクを始めた]
ふふ。ローズはどうするのかな?
ダンスを踊っちゃうのかな?
[間も無く差し出されたコリンズグラスを、女は軽い笑みと共に受け取り、カクテルピンに刺さる果物を弄んでは、グラスの中身に唇を寄せ、一人語ちる。]
でも考えると可笑しな話よね…。
いくら内部内での裏切り者である「破壊者」が出たとはいえ…、仲間同士で抹消させるだなんて…。
まるで…わたし達クラスの人間を全て掃討する為の…
と言うより、上の者達を愉しませる為のゲームみたい…。
[与えられた指令を反芻しては浮かび上がる疑問は、果たして誰の耳にも留められる事は無かったのか。]
――1F・"Platform"――
[人々の渦、ざわめき。
男はその中を、無言で歩く。
極限まで鍛え上げられた肉体、鋭い視線。
――男に気圧されたのか、人々はざわめきながら、彼のために道を譲る。それはまるで、古代の宗教者が海を割り、歩んだかのような光景――]
[男はカウンターテーブルまで無言で歩き、そして初めて口を開いた。]
………ミネラルウォーターを貰おうか。
[しかし女の疑問は、隣にdessertsの気配を感じ取ると、途端に唇を噤み――]
あらニーナ、いらっしゃい。
ダンス?…そうねぇ、わたしはダンスより、ベッドで熱を貪りあう方が性に合っているかもしれないわ?
[変わらぬ微笑をニーナに捧げる。]
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