[鎖の攻撃力は文字通り、身を持って知っているから。
僅か、緊張するのは否めない]

……あん時のも、大概、と思ったけど。
それ、超えてんなぁ……。

[鎖の擦れる音に思い出すのはいつかの対峙。
意識はせずにいるのだが、あの時の傷はまだ、完治には至っていない。
左上腕、重ねて狙われたなら厄介だな、とは。
表には出さぬ思考の一端]

[鎖はじゃらじゃらとエレベーターの進むうちにも絡み擦れ合う音を立てる。]

また、派手な力……
これだけの鎖となると、ボロにして叩き割るのも苦労するだろうし、相手の能力に下手に触れるのも危ないわよね。

[大規模、大概。口々に彼らが言うのに、同意と意思は示さぬが、音に耳を澄ませ、狭いエレベータの中嘆息した。]

どうしてやるのが一番いいかしら。
何か、あのメイドの能力について知ってることは、ある？

[解決の糸口さがし、縁深いようすの風薙とサフォアに問う形になっただろう。
エレベーターが鎖を鳴らして、上に向かう*+*+]

[エレベーターへ載った四人。
　悪意の園からの死者は、影からそぞろ出て
　上へと向かう彼らのエレベーター、そのワイヤーを噛みちぎる。

　呼応するように、各階に在る鎖も
　影から、壁から、天井から湧き上がり
　周囲の生命反応に攻撃をしかけようと首をもたげた。**]

知ってる事……ってもな。

[ロージアの問いかけに、がじ、と頭を掻く。
自分が見て知っているのは、鎖の動きに関するものと、相当な深手を負ったはずなのに、『生きて』いる、という事実。
一撃与えたくだりを説明する時には、さすがというか、声には苦いものもうっすら浮かんだが]

……だから……普通にダメージ与えるだけじゃ、止めらんないんだと思う。
動きとめたとしても、鎖が実質オールレンジだし。

[言いながら、何か忘れているような気もして、眉を寄せる。
それが何か、に行き着くのと、エレベーターの不自然な震動は、どちらが先か]

……んなっ!?

[がくん、と、そんな感じで伝わる揺れ。
それに次ぐのは、下方向への加速度]

ちょっ……お約束、すぎっ！

[それなりの高さまで来ていたはずの所からの落下は、どう考えてもよろしくない結果にしかいきつかない。
なら、ここから出なければならないわけだが、どうするかの思案は]

……とーりあえず。
扉、ぶち破る、か！

[一番単純な所に行き着いた]

[突っ込みはあったかも知れないが、それに返している余裕はない。
ついでに、扉を破ってもいいタイミングで向こうも扉とは限らない、なんて冷静な思考はない。いや、あったらこんな発想に至らない。
その辺りの、「細かい事は後で考える」のはやっぱり生来気質だった。

銀の上の緋、その上に、リズムが刻まれて]

《TYPE-blade》……Anfang！

[黒と緋の舞の後、『鬼』の装束を纏う。
手にするのは、それまでの剣、ではなく、太刀]

……ぶっつけ本番……いけぇっ！

[本来装備でないものにエネルギーをチャージするとどうなるか、とか、そんな不安はなかった。
そこまで考えていない、というか、それ以前に、キアを始めとする『Blaue Flamme』の技術スタッフを信じているから、行動するに躊躇いはなく。
力を帯びた太刀を、思いっきり、扉に向けて叩きつける。
エレベーター側の扉は、太刀で叩ききり、向こう側は衝撃波でぶち抜く、という目論見。
他の面々もそれぞれ力を振るうならば、打ち抜くのも容易いか。

いずれにせよ、前が開いたなら、後は外へと飛び出すのみ。**++]

[ガクンという音がした気がする、と思ったら、ものすごい音をたてて箱が落ちはじめて…、いる？]

ガクン…？

[状況がよく飲み込めていなかったが、風薙さんが簡潔かつ確実な方法を提案してくれて、落ち着きを取り戻す。]

扉の破壊、それでいきましょう！

[変身して、騎馬をしまう。焔鬼が扉を壊すなら、こちらは別方法でサポートする。]

はぁぁぁぁあ！

[剣に力を込め、壁に勢いよく突き立てる。コンクリートと金属がこすれ合う嫌な音が鳴り響く。室内に火花が飛び散って箱の中がピカピカ光って目が痛い。]

止まって！

[箱が止まってくれるだろうか？でも、止まってくれないと…**]

―― メンデルスタワー/70階 ――

[メイドは、鎖たちの宴を遠く聞きながら、振り返る。
　手にはチェーンの巻かれていないチェーンソー。
　頭には、もう花をつけてはいなかった。]

　どうするか、ですか。

[自分の影から鎖が湧き上がる。
　暴走してゾンネを狩りに来たようだ。
　おんなは素手で掴み、その白い掌を血に染めた。]

　私はメイドでございますから。
　華のお世話も人のお世話も、私の役目。
　鋼の華に群がる彼等に鉄ばさみを。

[ガイドバーにチェーンを巻く。]

　…………、

[貌をあげて、シャッテンを――ゾンネを見た。
　言葉ではなく、言霊で問いに答を返す。]

　華も毒も、いずれ散るもの。
　メイドはメイドらしく。
　私は私らしく。
　遣り残したことを果たしてこようと思います。
　……見苦しいことこの上ないですが。

[笑顔は、ほんの数刹那。
　血濡れの手でリコイルスターターを引くと同時
　おんなの血は、いろのない液体に変質した。]

　それでは。
　いってきます。シャッテン。

　勝とうと負けようと――
　貴方には、その先に咲く華の世話をお願いしておきます。


[秒速20ｍの刃が唸りを上げた。
　鋼の華を咲かせるおんなは、影の街へと沈んでゆく。]

はっ……やっぱか！

[密室にかかる重力、落ちていく感覚。
半ば予測していたとはいえ、やはり来ると一瞬背筋が冷える。
ほぼ同時とも言えるスピードで、皆々が変身していった。
縮こまる間などない。左眼は、あかく。]

変身-メタモルフォーゼ-！！