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[ヴェイドも一切れパイをもらうと、さくりと齧った。口の中にほのかに甘いでんぷん質が広がり、じわりと舌にしみこんで行く。]
・・・悔しいだけか?
[伏して声を絞り出すアイリに、そっと声を掛ける。]
霧雨、か。しかしリュミエールも疲れてんだろ。だから相手に気が回らない。
早く切り上げて、戻ったほうがいい。・・・運べるか?
無理なら俺が連れて帰る。
失敗を責めてばかりいては、先に進めねーぞ?
[そのままうじうじしそうになったが、ラフィーネに熱があると聞くと慌てて顔を上げた。
広げていたパイの弁当を急いでまとめ始める]
本当? 早く休ませてあげなきゃ。
― ギルド訓練場 ―
[訓練を終えて、畑の様子を見に行った。
同期生たちに囲まれているラフィーネの姿を確認した。
あの輪の雰囲気にはいまだ慣れない]
シロガネ様は、熱くもなく冷たくもない、ぬるま湯のよう……とおっしゃってましたか。
[くる、と踵を返して、ギルドへと戻ったのはラフィーネが倒れる直前の話。
同期が取った依頼のことを聞けば、そのメモにぺたりと*手形*]
[畑の外から中の皆に、手でメガホンを作るようにして声を掛ける]
どどどどうしたんですか?
ラフィーネさんなんて濡れて。まさか昨日の雨の中、ずっとここにいたんですかー?
[リュミエールに黙って頷くと、残りのパイを口の中に放り込んで咀嚼してごくり。]
・・・俺に抱えられるのは嫌かもしれんが、ちっと我慢しろ。
[ラフィーネに小さく囁くと、毛布でしっかり包み、抱えあげた。]
先、行っとくぞ。
ギルドの救護テントでいいよな?
[返事を待って、走り出した。]
―冒険者ギルド、昨日の夕方回想―
[ぼろぼろのみんながカボチャを退治して戻ってきたのを確認すると、ほっとする。]
みんな、よくあれを退治できましたね……!
[喜び労をねぎらい、しかしギルドからの失敗の通告があることに、ミリは目を丸くした。
条件の部分で何かひっかかったのでしょうか……と呟く。]
[カボチャ畑に戻るメンバーには気をつけて、と。
ギルドに残ったメンバーには飲み物や傷薬を渡す。
一通りの治療を終えるとミリは宿に戻り、その日は早めに休んだのだった。]
―回想、了―
[抱きかかえて走り出すヴェイドをみて]
あら?
ヴェイドさんがラフィーネさんをお姫様抱っこして、恋の逃避行?
こ、これは! 何かのサーガになるかもしれません。
我らが冒険者!いけいけヴェイド!のために、心に書き留めておきましょう。
―回想・昨夜―
[畑を離れ、ギルドへ引き返す。ギルドから伝えられた結果は、依頼失敗。平静を装い、フェイト達先発組みと言葉を交わすも、気持ちは上の空。報酬なんて、どうでもよかった。失敗の判断を下された原因すら考えることができなかった。頭の中では、今日起こった、起こしてしまった出来事だけが、ぐるりぐるりと回っていた。
モーリスに乗り、『夜陽の欠片』に戻る。自室に入ると、ベッドに腰掛け、両手で頭を覆って、呻いた]
馬鹿……なんであんな提案>>2:275を……。テイミングなんて、やったこともないくせに。
もしあんな方法を選んでいたら、今日みたいな結果にはとてもできなかったはず。
みんな、ちゃんと自分の役割を果たせていたのに、私は何もできなかったし……
[ヴェイドの問いかけに、>>2:290『ちょっと違う』としか答えられなかった自分を思い出す]
ふふ……。
伝えられる『ような気がする』
伝わってくる『ような気がする』
お互い合意があるように、勝手に思い込んでいて、挙句の果てには、勝手な申し出で、みんなを危険にさらすつもり?
……バッカじゃないの!!
[外にはいつの間にか、雨音が。前日の大雨とは違う優しい音。水の音に囲まれながら、いつまでもベッドの上でふさぎこんでいた]
―回想・了―
[翌日だいぶ時間が経ってから、連日の雨で湿った地面の上を、厩舎に向かって歩き出した]
……どうすればいいのよ。あのコ達は傷つけたくない。攻撃手段も他にはない。仮に切り込もうにも、私にそんな力はない。
でも、考えないと……
[思い浮かべたのは +裏+
表 → 一刀にすべてを賭けた、シロガネの姿
裏 → 不思議な力で大地を潤す、メイアルの力]
[メイアルの姿を思い浮かべる。不思議な能力の持つ彼の記憶を呼び起こし、両手を見つめながら、言った]
……彼ほどの力はなくても、私にはもうこれ……伝える力しかない。
いくべきね。この力を伸ばすために……
[倒れたリュミエールや、戦いの場となった畑のことは心配だったが……モーリスの背に乗ると、決意を固めて、ギルドへの道を歩みだした]
―『夜陽の欠片』→『冒険者ギルド』へ―
―図書館、朝―
[朝早くから、ミリは街の図書館に来ていた。
あまり人の来ないだろう一番奥の机を陣取ると、本を開く。]
おはよ、ファンタ。
……やっぱり図書館って好き?嬉しそうね。
[本の上に浮かぶ光の玉は、軽く弾んでミリに答えた。]
さてと。
久しぶりに、集中したいんだけどいいかな?
[そう言って、机の上の本に両手をかざした。]
……エント周辺の地図。
[ミリの言葉を受け、ページがぱららら、と捲れる。
開いたページには、エント周辺の地図が記されていた。]
うん、いつも通り、ちゃんとできる。
……じゃあ次は……
エント周辺の、魔物一覧。
[再び紙が捲れ、魔物の一覧表のページが開く。]
この中で、魔法生物……は。
[ミリはページの内容を細かく読み込み、眉をひそめた。]
……いない。
お化けカボチャの情報が無い。
じゃああれは、突発的なもの?
[顎に手を当てて考えるが、いい答えは浮かんでこない。]
……じゃあ、過去のカボチャお化けの情報。
[そう言って再び手をかざす。
ぱららら、と軽い紙の音が途切れ、あるページが開く。しかし……]
[ラフィーネを救護班に引き渡すと、特に用事がなかったのでギルドを出る。そとにシカの背に乗ったヴァレリアを見つけて、「よう」と声を掛けた。]
・・・・。ちょっと、話いい?
[聞きたい話があったのだが、今のヴァレリアの表情を見ると、必要なくなったかとも思いはしたが・・・。]
真っ白か。
私のレベルじゃここまでは無理、なのか。
カボチャお化け、だと情報量が多すぎるのかな……
[はあ、とため息を付いて本から顔を上げた。]
自分の本で調べられないのなら……
自力で調べるしか。だね。
ファンタ、ありがとう。
[本を閉じて立ち上がると、図書館に並ぶ本棚を見回した。]
ヴェイドさんとラフィーネさんも行ってしまわれましたし、リュミエールさんも一度戻りませんか? アイリさんも。
畑の心配をする気持ちは判りますが、畑仕事は素人の私たちに出来ることは少ないのです。
一度体と心を休めて、それから今後どうするか考えるのがよろしかろうと、僭越ながら申し上げておきますよ。
畑の精霊を呼び戻すアイテムや呪法もあるかもしれませんし、ミミズや養土を買ってこの土地にまくという方法もありでしょう。
そのためには先立つものが必要ですから、ギルドに届いた依頼をこなして報酬や情報を得るという方法もあるのでは、と思いますよ。
[メイアルはそれだけを言うと、「また来ますね」とぴょこりと生えた雑草を撫でて、来た時同様ずるずるとローブを引きずって街へ続く道を戻っていく。
その心には、今日はかぼちゃのポタージュが食べられないんだなという事が、悲しくのしかかっていた。]
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