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[寝転ぶヴェイドに習い、そっと草地に体を横たえた。野営する時のように、思わず丸まりそうになり……ゆったりとしたヴェイドの姿を見て、つい、真似をする。背中に触れる草の感触が、思った以上に気持ちがよく、安息をついたところで、掛けられた言葉に、はっとした]
……え? メノミリアとシロガネが? 洞窟……クノーメ先生はそう言っていたけど。
そう。そうなの……。二人とも、実力ありそうだったものね。
おめでとう。
……ええ。羨ましい。洞窟が、というよりも……そこへ向かえる実力をもった、二人のことが。
[しかし、続いた言葉には、天を見上げたまま、唇を噛んだ]
……違う。私は、ただ、依頼を達成したかっただけ。一緒に歩む相手を、ほいほい選ぶほど、私は軽くないわ。
選ぶ権利があるかどうかなんて、分からないけど。
でも、分かってはいる。モーリスも、ヒルダも、洞窟へ行くのは、困難だって。
あの体のモーリスと、空を住処とするヒルダが、いけるはず、ないんだもの。
実力、ね。地道な努力なくしては得られないものだ。
まあ俺は、本気でカボチャをテイムしようとしたとしても、止めていた。
ヴァレリアは、テイムした後のことまで考えているようには見えなかったから。
俺さ、むっかーしに1回、テイマーって人を見たことがある。複数の魔獣をびしっと使いこなしてて、ちょっと格好いいなぁと思ったことがあるんだよ。
しかしその人は、魔獣を連れ歩くために、街なかの暮らしとはほぼ無縁の生活を送ってた。
テイマー本人にとっては無類の仲間なんだろうけれど、そうでない人にとってはただの魔獣だ。見るなりいきなり攻撃を仕掛けられたこともあると聞いた。
まあそれはともかく・・・。
[そこでひとつ息をついて]
ヴァレリアにとって、こいつらって何?
[ヴェイドの顔が、横にいるヴァレリアに向いた。じっとヴァレリアを見つめる表情には、先ほどの温かな雰囲気が消えている。]
ー 誰もいなくなったカボチャ畑 ー
[ふうふう言いながら、スコルは最後の往復を終えた。]
やれやれ。拵えるのも一苦労なら、ここまで運ぶのも一大事。これから撒くのは大仕事だな。
[顔を出している新芽に『おっ!?』と驚きつつ、畑に先ほど来作っていたモノを少しずつ散布していく。]
うちの一族でも、似たようなのを休耕田にやってるから、少しでも効き目があるかねえ。
俺の自作品だし、効果の程は保証できんが…
ほんのチョッピリでもいい。この土地に、精霊の加護と栄養が戻ってくれれば、なあ。
[持って来たのは、精霊の力も加えた、土地の栄養剤。
間違っては大変と、試作時は老錬金術師の監修を受け、その後は素材を集めやすい西の高台で作っていたもの。]
[あらかた撒き終え、畑を見渡す。]
いつまでも、沈んだ顔でいるみんなは見たくねえなあ。
[カボチャ退治の顛末は、戻ってきた者達から聞いた。
昨晩、自分が参加していても、趨勢が変わっていたとは思えない。
でも、その場にいたなら、今の気持ちを共有できただろうか。]
これが俺からの、目一杯の『援護射撃』だ。…がんばれよ。
[頼りなく揺れる若葉に声をかけると、スコルは畑を後にする。]
[『テイマーに会ったことがある』その言葉を聴き、電撃に打たれたかのように、びくり、と体がゆれた。どこか遠くの噂話で聞いた、テイマーの話を、再び思い出す。ヴェイドの語った言葉の通り、それは…とはかけ離れた存在だった。口調が変わる彼の言葉に、震えそうになる声を、必死で抑える]
……昨日、言ったはずよ。>>2;275『男と女の関係』みたいなものだって。
お互い、一緒にいることを選んでいるだけ。
気持ちが通じているから……たぶん。
[思わず付け加えてしまった言葉に気づき、その場から飛び起きた]
ねえ、ちょっと待って!! なんでそんなこと聞くの!?
何が言いたいのよ!?
あなたには感謝している。でも、変よ。洞窟のことも、このコ達のことも、いきなりそんなこと聞き出すなんて……。
男と女の関係、か。
[ヴァレリアの答えを明確に聞いて、ヴェイドも上半身を起こした。何事か、考えている。]
・・・俺、魔獣のテイマーの人にも、同じ質問をしたんだ。何て答えたかって?
ははは、教えない。
ともかくだ。
俺には、ヴァレリアは動物に頼り切っている。むしろ甘えてる。そうとしか見えないんだよな。
だって、ヴァレリアが動物たちの訓練をしている姿すら見たことない。
ホリーを見ただけでも分かる。すぐにお前さんの制御から外れてしまうようだ。
聞きたいから聞いてみただけ。
ちょっと長く生きてる分、あれこれ知ってるだけだ。
[軽く肩をすくめて、笑ってみせる。]
ー カボチャ畑 → 冒険者ギルド ー
[道具を片付け、何食わぬ顔でギルドへ。]
♪ニャン〜ダバダ〜ダ〜…よう!何か困り事は無いかい?
自分のより街の人のを優先してくれって?っか〜!えらいねェ!
[受付嬢に軽くいなされつつ、次に請け負う仕事の吟味。]
何がいいかねえ?モンスター退治は俺には荷が重いし…ん?
【古くなった東の街道を見てきて欲しい。一昨日の雨が気になる。】
…姉ちゃん、これ、どういう意味?
あー、すまん。分かるわけねえよなあ。…依頼主に会って、直接聞いてみっか。ええーと?場所は…
[ヴェイドの言葉にじっと耳を澄ます。『甘えている』という言葉が、ずしんと心に響いた]
分かっている。
気づいているわ。……嫌でも。
こんなに、真正面から言われるなんて、思いもしなかったけど。
[笑顔を見せるヴェイドに対して、今度は笑みを返すことはしない]
……でも、言わせて。私は、制御しているわけじゃない。使役しているわけでもないわ。
四人で一人よ。その戦い方を模索していくつもり。
私が弱いことは、このコ達が否定されることになるんだから。
[彼の続く言葉は分からない。ただ、精一杯に、そこまで、言い切った]
制御していない、使役していない。そういう形もあるかもしれない。
でもな。
[ヴァレリアのあごを手に取ると、くいっと自分の顔の前に寄せる。]
ヴァレリア、お前さん恋愛したことねぇだろ?
男と女ってのはな。
[ヴァレリアの目を覗き込み、意地悪そうににやりと。]
・・・努力しなきゃ、簡単に、縁が切れるんだ。
[ふいと手を離すと立ち上がり、ヴァレリアを見下ろすようにして言い放つ。]
否定されなきゃ強くなれ。俺が言いたいのはそれだけだ。
何かほかに言いたいことはあるか?
ー エントの街・民家 ー
[訪ねた先の家には、年老いた男性が1人で住んでいた。依頼の詳細について尋ねてみる。]
ふんふん。なるほどねェ。じいさんが現役時代に保守点検を請け負ってた街道のことが気になるのか。
この地図の…赤丸が付いてるところが、地盤が不安定で、大雨なんかで崩れやすいトコなんだな。
そこを見てくりゃいいのかい?
[頷く老人に、ふと頭を過ぎった疑問をぶつける。]
…でもよ。なんで退職したあんたが、こんなこと気にすんだい?放って置いたって街の方で何とかすんじゃあ…
[余計な一言で、老人のスイッチが入る。老人は、自分の仕事を引き継いだ連中のことを、延々とグチり始めた…]
わ、わぁーった!わぁーった!
つまり、苦情が来るまで対応しねえような若い連中には任せておけねえってんだな?
へいへい。俺が代わりに見てきてやんよ。安心して待ってな。
もー。
ハロウィンのお祭りのことばっかり!
[しばらく図書館で調べていたが、『お化けカボチャ』を調べると、ハロウィンの情報ばかりが出てくる。
ぷうっと頬を膨らませて、広げていた図書館の本を全て閉じると元あった場所に戻してきた。]
魔術師ギルドの先輩に話を聞いたほうがいいのかなあ。
[ぶつぶつ、別の情報源を考えながらいつものように大きな本を背負うと、図書館を出た。]
[あっという間に、自分の顔が、ヴェイドの顔のすぐ近くに引き寄せられている]
な!? そんなこと……な……
[先ほどの気負いの内、上澄みの力んだ部分だけが、心の動揺せいで追い出されてしまったように感じた。否定の言葉を言い切れずに、口ごもる自分の動きが、赤面に拍車をかける。それはほんの一瞬のことで……『努力しなきゃ』の言葉とともに、彼のもとから開放された]
……ご高説。どうもありがとう。
言いたいこと?
ええ。私も、こんな目に合わされるなんて……もうたくさんよ。
[ちらり、とヴェイドを一瞥すると、ふて腐れるように、そっぽを向いた]
[ヴァレリアの様子に、軽く苦笑いする。一発殴ってくるくらいならばまだ張り合いが合ったのだが、コナかけは成功したのだろうか?]
じゃ。
[手を振ってギルドのほうへと歩き出す。
ヴァレリアが自分に対して不審な何かを感じているのは間違いない。しかしあえて口止めもしなかった。]
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